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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

モチイエ女子project × tofubeats 「すてきなメゾン feat.玉城ティナ」
コラボ記念フォトノベル

妄想メゾン

稀代のトラックメイカーtofubeatsと、モチイエ女子projectがコラボ!
歌姫に玉城ティナを迎え、モチイエ女子をイメージしたオリジナル楽曲「すてきなメゾン feat.玉城ティナ」が完成しました。
モチイエ女子webでは、必見のミュージックビデオと、スピンオフとしてショートストーリー「妄想メゾン」をお届けします。

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妄想メゾン Room 1

終業時間が近づくと、私はソワソワしてくる。今日は書類の仕事をさっさと片付けて、会社を出たい。飛び切りのライブが待っているから。
服を着替える必要も、お化粧を直す必要もない。ライブは会社から電車で二十分、私鉄沿線の駅から徒歩十分、五階建てのマンションの三階にある一室で行われる。玄関で靴を脱ぎ、短い廊下を突き当たって左のドアを開け、キッチンを抜けると十帖ほどのリビングに着く。ここが今日の会場だ。
防音二重サッシを取り付けた西側の窓から、夏の夕日が差し込んでいる。お隣の部屋に面した南側の壁の一面には、特注の棚がはめ込んである。その裏は防音ボードを取り付けてもらった。床には毛足の長い、ダーク・ブルーのカーペットが敷き詰めてある。もちろんこれも、防音効果を狙ってのことだ。
オーディオ機材とCDプレーヤーを収納した棚の上のカウンターには、長い間使っているテクニクスのターン・テーブルと、黄色い薔薇を生けた小さな青い花瓶が置いてある。棚の上部にはずっとコレクションをしてきたアナログ・レコードが隙間なく詰まっている。私はパソコンやスマート・フォンではなく、CDでもなく、レコードで音楽を聴くのが好きなのだ。
レコードはジャンルに関係なく、アーティスト名のAからZの順に並べた。一番上の左端にあるレコードは実家に昔からあったABBAの『ゴールデン・ベスト』。下の棚の右端にあるのがゾンビーズの『オデッセイ・アンド・オラクル』だ。

学生時代にバイトしていたレコード店から譲ってもらった仕切り板の「B」のコーナーから、私はデヴィッド・ボウイの『アラジン・セイン』のレコードを引き出し、稲妻メイクを顔に施して瞳を伏せるジャケットのボウイにそっと口づける。レコードをターン・テーブルに乗せる。「あの男に注意しろ」のイントロのギターがスピーカーから流れて、部屋いっぱいに鳴り響いた瞬間、私は嫌なことを何もかも忘れてしまう。
インターネットの配信ではとても味わえない、この音。実家や借りていたアパートで、ヘッドフォンでレコードを聴いていた時には感じられなかった開放感。このためだけでも、自分のマンションを買った価値があった。「アラジン・セイン」の曲に合わせて、私は軽く踊りながらジャケットを脱いでいく。反対側の壁には一人がけのソファがある。そこに座ってビールを飲み、私一人だけのために開かれるこのライブを楽しむのだ。

レコードのA面が終わって、B面にひっくり返す前に、私は冷蔵庫から前夜作ったラタトゥイユを取り出す。キッチンのカウンターに寄せた小さなダイニング・テーブルで夕食を食べながら、私はB面の一曲目の「タイムズ」に耳を傾ける。
レコードが終わったら、ソファの横に立てかけているギターを手にとって、気ままに弾いてもいい。ギブソンのレス・ポール・クラシックとグレッチのセミ・アコ・ギター、ホワイト・ファルコンは何よりも大事にしている私の宝物だ。どちらも小柄な私は持つと「よいしょ」という感じになるのだけど、ギターは私のこだわりだから仕方ない。社会人になって、仲間とやっていたガールズ・バンドは自然解消になってしまった。でもいつか再結成する日を夢見て、私はギブソンでT-REXの「テレグラム・サム」を弾いてみる。私たちの「アラジン・ガールズ」はグラム・ロックのカバーばかりやるので有名なバンドだった。今でも、鏡を見ないでアラジン・セインの雷メイクを顔に描くことが出来る。

ここは、私だけのアリーナ。私だけのスタジオ。私だけのライブ会場。こんな部屋に住むことをずっと、ずっと夢見ていた。ロック・スターになることに比べたら、小さな夢かもしれない。でも、自分で叶えたこの夢は、何よりも愛おしい。
家に帰ってからのそんな愉しみについて、会社の後輩のエミちゃんに社食で語っていたら「それって、自宅が専用のカラオケ・ボックスみたいなことですか? いいなあ」と彼女は目を輝かせて言った。ちょっと違うけど。でも、失恋した時に泣きながらテイラー・スウィフトを大声で歌って憂さを晴らしたこともあるから、あながち間違いだとは言えないのかも。 「西村さん、スピーカーとアンプは何を使っているの?」と背後から声がした。振り向くと、後ろのテーブルの席に古賀君がいた。他部署に所属している同期で、交流会で何度か飲んだことがある。

「スピーカーはJBLで、アンプはマッキントッシュだけど」
「マジで?! いいなあ。めちゃくちゃいい組み合わせじゃない」
古賀君は満面に笑みを浮かべた。
「そんな環境で好きなレコードが聴けたら最高だよね。最高の部屋に住んでいるんだね」

私のコレクションにローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』は入っているかと聞かれて首をふると、古賀君は信じられないという顔をした。
「ボウイの『アラジン・セイン』は、あのアルバムにめちゃめちゃ影響を受けているんだよ。西村さんの部屋であのアルバムを聴いたら、すっごくいいと思う」
だったら、レコードを持ってうちに遊びにくれば。そう言おうとしている自分に気がついて、びっくりして古賀君の顔をまともに見てしまった。
彼がレコード・バッグを手に、私服のボタン・ダウンのシャツで私の玄関前に立っているところを一瞬、想像して、悪くないと私は思った。

山崎まどか

山崎まどか

コラムニスト・ライター・翻訳家。雑誌『Olive』にて連載を持ち、2002年単行本「オードリーとフランソワーズ」を刊行。
「女の子」独自の目線で本や 音楽、映画などのカルチャー情報をセレクトし紹介するコラムを様々な女性誌、カルチャー誌に執筆。
近著に「オリーブ少女ライフ」、「ヤング・アダルトU.S.A.」

タイアップ楽曲

tofubeats – すてきなメゾン feat.玉城ティナ ミュージックビデオ

tofubeats

1990年生まれ、トラックメイカー / DJ。
学生時代からインターネットで活動を行い、ジャンルを問わず様々なアーティストのリミックスやプロデュース、楽曲提供を行う。9月16日豪華アーティストをゲストに招いたアルバム「POSITIVE」をリリース。

玉城ティナ

モデル。1997年生まれ。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で講談社「ViVi」の最年少専属モデルとなる。CM、ドラマ、映画など多方面で活躍中。

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