つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。
いったい誰がそんなことを決めたんだろう。
女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?
そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。
家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。
そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。
モチイエ女子project × tofubeats 「すてきなメゾン feat.玉城ティナ」
コラボ記念フォトノベル
稀代のトラックメイカーtofubeatsと、モチイエ女子projectがコラボ!
歌姫に玉城ティナを迎え、モチイエ女子をイメージしたオリジナル楽曲「すてきなメゾン feat.玉城ティナ」が完成しました。
モチイエ女子webでは、必見のミュージックビデオと、スピンオフとしてショートストーリー「妄想メゾン」をお届けします。
少女だった頃、彼女は「ナルニア国ものがたり」にどうしても納得がいかなかった。どうしてペベンシー一家の四人兄弟は、タンスを抜けて、その先にある別世界に行きたがるのだろう?
「私だったら、毛皮や、素敵なお洋服がかけてある大きなタンスの中にずっといる!」彼女はそう言って、周囲の大人たちやその本に夢中の同級生を驚かせた。
小さな時から、彼女は洋服が大好きだった。誕生日やピアノの発表会で特別なドレスや、レースのついた靴下や、エナメルの靴でおめかしするのも大好きだったし、誰かのクローゼットに素敵なドレスが並んでいる様子を見るのも好きだった。親戚や友達の家に遊びに行くと、まずその家のクローゼットをのぞいてみないと気が済まなかった。かくれんぼをすると、決まってクローゼットの中に隠れた。暗闇の中でハンガー・ポールから吊るされた色とりどりの服を見上げていると、いつもほっとした。
もう少し大人になると、海外ドラマや洋雑誌のインテリア特集に出てくるセレブリティのウォーク・イン・クローゼットに夢中になった。「SEX & THE CITY」のキャリー・ブラッドショーの、アパートの廊下を改造したウォーク・イン・クローゼットや、壁一面にクリスチャン・ルブタンやマノロ・ブラニクのハイヒールが並ぶ、図書館用の梯子がついたシューズ・シェルフ。ハンガー・ポールの上のコーナーにディスプレイされている色とりどりのバーキンの鞄。彼女は夢中になって写真を集めてスクラップし、インターネットの画像をピンタレストに貼り付けた。
大人になって1LDKの一室を手に入れた時、彼女に迷いはなかった。リビングをベッドルームの代わりにして、ベッドルームの方は丸々ウォーク・イン・クローゼットに改造するのである。
リビングに面した、ドアのある壁の方は、鞄や小物を整理する棚と、ドレッサーを置いた。アンティーク・ショップで見つけた古いデスクの上にアール・デコ風の扇型のミラーを置き、お化粧品や香水瓶を飾ると、それだけでハリウッド黄金期の女優の気分だ。ドアを開けて左手の狭いコーナーにあるのは、シャツやセーターを畳んで整理しておく棚。部屋の中央には胸の高さまであるドロワーを置いて、その上にジュエリー・ボックスを乗せた。
そして反対側の壁には、ハンガー・ポールで吊るされた服がずらりと並ぶ。棚の半分は二段にして、ジャケットやトップスを吊るすポールとボトムスを吊るすものに分けた。半分はドレスやコートを吊るすコーナーだが、左端だけミラーを貼った扉がついている。特別な服はここにしまうのだ。
ウォーク・イン・クローゼットのドアを開けると、まずこの棚の扉に貼った鏡が目に入る。少し引いた全体像を映して見るのに、ちょうどいい距離だ。
一方で、このクローゼットはまだ完璧とは言えないとも思った。理想とするような小ぶりのシャンデリアを見つけることが出来なかったし、映画『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のヒロインの部屋や、ケイト・スペードのブティックの試着室に使われているのを見て憧れていたScalamandreの赤地に縞馬の壁紙は、取り寄せの料金が高くて断念した。
特別な服を入れるコーナーにはヴィンテージのドレスが一枚かかっているきりだし、玄関に作ってもらった大容量の靴の棚もスカスカで、ルブタンやマノロやジミー・チュウのような高価な靴は一足もない。
でも、慌てることはない。ここは自分の部屋なのだから、少しずつ手を入れて、理想の形にしていけばいい。憧れを捨てずに、目標をひとつひとつ実現していこう。ウォーク・イン・クローゼットは彼女に仕事の張り合いをくれた。
週末に女友だちを呼んで、このウォーク・イン・クローゼットを開放したことがあった。友だちは彼女のクローゼットから服を選んで、好きにコーディネートしたら、クローゼット部屋のドアを開けて、ベッドルームで待っているみんなに披露するのだ。サイズの違いで服が痛まないかとヒヤヒヤすることもあったけれど、これが最高に楽しかった。終わった後は、みんなで宅配のピザを食べながら「プロジェクト・ランウェイ」の一気見をした。まるでパジャマ・パーティみたいだった。クローゼットが魔法を使って、彼女に少女時代を運んできたのだ。
だけど、彼女がクローゼットの本当のマジックに気がついたのは、もう少し後のことだった。
服を選び、ウォーク・イン・クローゼットから出て、玄関のドアを開ける時、昔よりもワクワクしている自分に彼女は気がついた。いつもの仕事に行くだけなのに、冒険に出ていくような、この感覚は何なのだろう。
ああそうか。彼女は、はっとした。私は魔法のクローゼットを抜けて今、別世界に行こうとしているんだ。この外はナルニアのような不思議な場所かもしれない。そこではどんな素敵なことが待っているか、分からないのだ。
コラムニスト・ライター・翻訳家。雑誌『Olive』にて連載を持ち、2002年単行本「オードリーとフランソワーズ」を刊行。
「女の子」独自の目線で本や 音楽、映画などのカルチャー情報をセレクトし紹介するコラムを様々な女性誌、カルチャー誌に執筆。
近著に「オリーブ少女ライフ」、「ヤング・アダルトU.S.A.」
タイアップ楽曲
1990年生まれ、トラックメイカー / DJ。
学生時代からインターネットで活動を行い、ジャンルを問わず様々なアーティストのリミックスやプロデュース、楽曲提供を行う。9月16日豪華アーティストをゲストに招いたアルバム「POSITIVE」をリリース。
モデル。1997年生まれ。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で講談社「ViVi」の最年少専属モデルとなる。CM、ドラマ、映画など多方面で活躍中。