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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル?

雨宮まみの大人気連載、第2シーズンは
「女が、ひとりで暮らすこと」を考えます。
ひとり暮らしの人はもちろん、“ひとりの時間”を過ごす、
すべての女性にそっと寄り添う“暮らし”エッセイ。

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  • リビング

    リビング

    Nov.24.2016

  • ドレッサー

    ドレッサー

    Oct.13.2016

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    Aug.25.2016

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    玄関

    Aug.10.2016

  • 一人の部屋って、やっぱり最高!

    一人の部屋って、
    やっぱり最高!

    Mar.17.2016

  • 一生ものって、どんなもの?

    一生ものって、どんなもの?

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    買い物・オブ・ザ・イヤー?

    Jan.14.2016

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    外に出る幸せ

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    Sep.10.2015

  • 「買えない」が「買いたい」に変わるとき

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  • 孤独に襲われるとき

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理想の部屋まで何マイル? MILE 14

思い出、どうしてる?

世の中には二種類の人間がいる。実家を出るときに卒業アルバムを持って出る人間と、持たずに出る人間が。なんて言い切ることができたら楽なのだが、実際そうした「思い出」をどのように扱うかというのは、なかなかややこしい問題だ。卒業アルバムなんかは置いていけても、思い出の品、記憶と結びついた品というのは無数にある。
写真や手紙の整理が難しいというのはよく言われることだが、それ以外にも扱いに困るものは多々ある。卒業アルバムなんか躊躇なく捨ててしまえるほど未練知らずの人間であっても、結婚式でもらってきた引き出物を帰宅後すぐに不燃ごみと可燃ごみに分別してゴミ箱に叩き込むというのは、さすがにちょっと躊躇するのではないだろうか。別に今すぐ捨てようが一ヶ月後に捨てようが、特に何も変わらないのはわかっているけれど、幸せを祝って拍手なんかしてきたその手ですぐさま引き出物をゴミ箱に……というのは、なんだかあまりにも人としてアレな気がする。誰も見てなくても気が咎めて、せめて一晩ぐらいは置くか……なんて思ってみたりする。その結果、気づけば3年も5年も同じ場所に居座っていたりするのだ。

自分の思い出に関しては「これにはなんの未練もないな」ときっぱり判断できても、他人に関わる思い出の場合は少し事情が変わってくる。プレゼントとして受け取るものなんかもそういうものの一種だ。相手が絶対に死ぬまで家に遊びに来ない、と決まっているのなら、いい。しかし人生、何が起きるかわからない。人が思いやりと愛情を込めて選んでくれたものを、好みに合わないからといって捨てるのは勇気が要る。いや、勇気と言っていいのだろうか。必要なのは非情さ、好みに合わないものは決して家には置かないという非情の掟なのかもしれない。

その掟を持たないと、どうなるか。家は、そこそこグシャグシャになる。基本的に、人からのいただきものというのは、品質のいいものだ。いいものだから好みに合わなくても捨てづらい。ちょっとは使ってみてからでいいんじゃないか、と保留にして使ってみる。いいものだから簡単にへたれたり壊れたりしない。そして、いろんなタイプの、いろんな雰囲気の、それぞれはいい品だけどバラバラなものが、家を占拠してゆくのである。実家を思い出すと、だいたいそんな感じではないですか、みなさん。「もったいないから」といえば、確かにそうだ。「せっかくもらったものだから」、ちょっとは使ってみないと申し訳ない。しかし、お気持ちは嬉しくとも、こちらも限りある人生を生きているわけで、あと何回飲めるかわからないコーヒーをわざわざ気に入らないカップで飲まなくてもいいと思うし、妙に吸水性が悪い分厚いタオルで髪を拭いたりしなくてもいいと思うのも事実だ。

理想の部屋まで何マイル? MILE 14

こういう考えを持っていると、今度は人にものを贈るのにものすごく悩むようになる。趣味に合わないものをもらったら困るだろうなと思ってしまうからだ。悩みに悩んで、サプライズ感には欠けるが、欲しいものをあらかじめ聞いたり、あげたいなと思うものの候補を出してどれがいいか訊いてみたりする。消耗品とか、とっておかなくてもいいものにしたりする。
友人で、贈り物を受け取ることの多い人がいる。彼女はそういう立場上、やはり人にものをあげる際には「もらっても迷惑なものをいかに避けるか」をすごく考えてしまうらしく、ちょっとした贈り物には、上等な塩などを選ぶと言っていた。確かに、塩を使わない人はごく少数だろう。料理をしなければお風呂に入れてもいいし、なんなら玄関に盛ったっていい。いい考えだなぁ、と思った。

そういう考え方をしてしまうのは、今のブームが「ものを減らして、シンプルに暮らす」とか、「厳選した好きなものだけに囲まれて生活する」とかだからなのだろう。

そういうところを、ひょいっと飛び越えてくるような出来事が起きることもある。
あるとき、友達が台湾に旅行に行った。旅先からSNSに写真をアップしていたので、私は彼女の旅の様子を知ることができたのだが、ある夜彼女は夜店に出かけて、射的をしていた。そこで、難しい的に見事弾を命中させ、なんと一等と言っても過言ではない商品を手にいれた。
その一等の商品は、ネズミらしき動物の陶器の貯金箱で、一見、自分の尻尾をくわえているようにしか見えない謎の像だった。かわいい……とも言い難いし、よく見るとくわえているのは尻尾ではなく、肩に背負った花の茎なのだ。茎と尻尾の色が同じネズミ色なのはおかしいし、裏面を見ると、ネズミなのに尻尾はちょこんと短い。要するにいろいろとおかしい。が、これを射的で落とした彼女はその場で英雄のごとき扱いを受けたのだそうだ。私はこの珍妙な貯金箱がものすごく笑いのツボに入ってしまい、入手のいきさつも含めておかしくて、やたら面白がっていた。
帰国した彼女と会うと、彼女が「まみさん、これ」と、袋に入った何かを渡してくる。「いらなかったら持って帰るよ」と言われたそれは、もちろんネズミの貯金箱だった。
インテリアに合うかというと、もちろん合わない。これを置いた部屋がお洒落かというと、お洒落になりようがない。でも、私はこれを欲しくないとは1ミリも思わなかったのだ。射的で落とした一等を、面白がってる私に持って帰ってきてくれたのだし、何よりこの珍妙なネズミのことを、私は変に気に入ってしまった。
ドライフラワーの近くに置いてみては「おかんアートにしか見えない」と言われたり、さりげなくものがごちゃごちゃ置いてあるところに溶け込ませようとしては「そこだけ昭和の匂いがする」と言われたり、評判はさんざんだが、やはりいつ見ても、なんだかたまらない。愛着がわくあまり本当に小銭を入れて貯金してしまい、そこそこの金額が貯まったりしたほどである。
最近では来客も見慣れてきたのか「なんとなく、アンティーク風に見えないこともない」などと言い出し、わりと、本当に溶け込んできている。

人の迷惑にならないものを選んであげたいとか、気に入らないものならあげないほうがましだとか、それはそれで、確かに真実だし、今ふうの気遣いの仕方だと思う。
けれど、たまにこうして、そういうことを踏み越えてこられることが嬉しくもある。人と人の関係って、だいたいそういうもんじゃないだろうか。思いがけず踏み越えてこられたことが嬉しかったり、自分から踏み越えたことで親しくなれたり。自分では買わないものをもらって、それが意外に良かったり、気に入ったりすることもある。
ものをあげるということは、人のテリトリーに踏む込むことでもある。踏み込まれて嬉しいか、嬉しくないか。踏み込むときに、良い踏み込み方ができるか。難しいけれど、ものに関しては、「気に入らなければ捨ててもらってもいい」というくらいの気軽さを持って、少しだけ踏み込んでみるのも、いいのかもしれない。

文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

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