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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル?

雨宮まみの大人気連載、第2シーズンは
「女が、ひとりで暮らすこと」を考えます。
ひとり暮らしの人はもちろん、“ひとりの時間”を過ごす、
すべての女性にそっと寄り添う“暮らし”エッセイ。

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理想の部屋まで何マイル? MILE 15

孤独に襲われるとき

「地震が来ると、一人暮らしの心細さを実感する」「具合悪くて寝込んでるとき、誰かいれば……と思ってしまう」「IKEAの家具を一人で組み立てなきゃいけないとき、男手のないつらさが身にしみる」
そんな話をよく聞く。頷ける部分もあるが、私は実はこういうのはわりと平気である。地震が来ればSNSで不安を共有できるし、現実的には食器棚を押さえに走るぐらいで、わりと冷静だしそんなに強い恐怖は感じない。寝込んでいるときはつらいが、コンビニぐらいなんとか行けるし、かかったら起き上がることすらつらくなるインフルエンザの予防接種は必ず受けるし、やばいと感じたらすぐ病院に行く。IKEAの家具は有料の組み立てサービスがある。
一人暮らしも長くなれば、幾多のピンチを一人で越えてきているわけで、「これだけはきつい」と思うことへの対処法も、それなりに知っている。だから、この程度のことでは「一人がつらい」とは思わない。ビンのふたが開かなければ、無言で湯煎にとりかかるし、それでも開かなければ100均でフタ開けグッズを買ってくる。既婚の友人にその話をすると、「男手があっても、今開けたいってときにいてくれるとは限らないし、本当に固いフタは男でも開けられないときあるんだから、別にいてもあんまり変わらないよ~」と言われた。実は「女の一人暮らしは、つらい」と思い込んでいることの半分ぐらいは、「女の一人暮らし」じゃなくても起こることなんじゃないか、と私はにらんでいる。

それでも、孤独に襲われることがないとは言えない。私はそういう時間のことを「魔の時間」と呼んでいる。
私は一人の時間が基本的に好きだ。一人だとのびのびできるし、誰かと一緒に暮らしたいとは、ほぼ思わない。家族とだって、もう一緒には暮らせないと思うくらいだ。一人の気楽さ、気兼ねのなさに替えられる幸せはないとすら思う。

そんなに一人が好きでも、耐え難いほどの孤独を感じるときはある。
たいていは、仕事で失敗をしたとき、仕事の先が見えないとき、そして、失恋したとき、もしくはそれに準ずるときだ。あまりにも普通すぎるけれど、私が「一人がつらい」と感じるのはそういうときだ。
失恋して見苦しく泣き明かす夜に誰かにそばにいてほしいとは思わない。どうせ繰り返し同じ話になってしまう話を聞いてほしいとは思わない。

理想の部屋まで何マイル? MILE 15

仕事の話だって同じだ。失敗したことに対して、言えることなんかそんなにない。気にするなよ、そんなたいしたことじゃないよ、次がんばって取り返すしかないよ、その三つの励ましの言葉を言ったら、もう言葉が尽きてしまう。仕事の先が見えない、なんて、これはもう、言うまでもなく多くの人が感じていることなわけで、自分だけじゃないこともよくわかる。
仕事じゃなくても、「これから先、自分はどうなるんだろう」という漠然とした不安に襲われて、怖くて怖くて眠れなくなった、という体験を持つ人は多いのではないだろうか。

そうしたときに、誰かが側にいてくれれば、その不安は消えるのか。
私は、そうではないと思う。
つらいとき、そのつらさに付き添ってくれた人は、いた。そのことはとてもありがたかったけれど、それで「孤独が癒された」と思ったことはない。誰かが側にいてくれれば解決することではない、というのが、私の考えだ。
仕事のことも、恋愛のことも、将来のことも、それを解決できるのは自分だけだ。答えを誰かに「はい」と差し出されても、納得できない。納得のいく答えを出せるのは自分だけだし、それを出すまでの時間こそが「孤独な時間」なのだ。

その時間は、だいたい夜にやってくる。涙が止まらなくなったり、虚無感や疲労感に襲われているのに寝付けなかったりする。一人暮らしが長ければ、こういうときの対処も、それなりに慣れた。とりあえず朝が来れば楽になることはわかっているのだから、睡眠薬に頼るときもあるし、それでもだめなときは、多少気力があれば録画しておいた映画を観たり、本を読んだりする。こういうときのために「何度読んでも勇気づけられる本」が何冊か置いてある。
単純作業に没頭するのもいい。細かい拭き掃除をするとか、服を全部出してたたみなおしたり、アイロンがけしたり。手を動かしている間は、考えに集中できない。裁縫や小物の整理なんかもいいし、靴などの革製品の手入れもいい。
でも、ほとんどの場合、動く気力もなく、自分を励ますことも思いつかない。ただ、苦しい夜をじっと過ごすだけになることが多い。それでもそういうときに少しでも楽になるヒントとして、知っておいてほしいのだ。苦しい夜に、苦しさを味わえば味わうほど解決に近づけるということは、ない。その苦しさを味わっていいことなんかない。一歩間違えば死んでしまう。だから、どんなにくだらないと思っても、そんなことに効果はないと思ってもいいから、やってみてほしいと思うのだ。
何かをしている間だけ、私たちは死の方向に引っ張られるのを止めることができる。

でも、孤独が誰にも救えないからといって、誰も必要じゃないとは思わない。やりきれないことがあったとき、友達がLINEで一緒になって怒ってくれて気が晴れたこともあるし、長年、自分の仕事を見てくれている人が「あなたは本当に、よくがんばっているね」と言ってくれたときなどは、これまでのつらい時間がすべて報われて、おつりがそのへんにジャランジャランと散らばりまくる気がした。
孤独でつらくてたまらない時間、まさにそのときに救ってくれる、タイミングの良い神様みたいな人はいない。その時間は一人で乗り切るしかないけれど、その時間を乗り切るための力をつけてくれるのは、まぎれもなく友人であり、近しい人であり、大事な人なのである。
部屋に一人でいることが孤独なのではない。一人の人間は、星座のように、どこかで見えるか見えないかの線でつながっていて、孤独を慰め合い、見守り合い、互いの孤独な戦いの美しさを、讃えあっているのである。

文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

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