![モチイエ女子 住にまつわる楽しいコンテンツ](../../common/images/nav_top_head_1.png)
つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。
いったい誰がそんなことを決めたんだろう。
女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?
そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。
家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。
そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。
モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。
“なんとなく買ったもの”に囲まれた毎日を抜け出して、
愛着溢れる“理想のお部屋”で生きていきたい。
そんな女性に送る、雨宮まみの情けなくも前向きな
“暮らし”エッセイ。
先月、インドから空輸してもらったチェストが無事届いた。なんと送料が無料だったのでかなり不安だったうえ、直行便でなく香港に立ち寄ったりしてかなりの時間がかかったのだが、成田空港に到着すると、翌日にもう自宅に届いた。日本の物流、さすがである。ものすごく厳重に梱包されたそれを「70kgあるんですけど大丈夫ですか? ここにサインしてください、じゃっ!」と帰ろうとする配達員の方を引き止めて「いやいやいや、これ一人じゃ無理です!」と泣きつき、汗だくになりながら梱包を解くのを手伝ってもらい、所定の位置に一緒に運んで置いてもらった。「現地で買われたんですか?」「いえ、ネットで……」。そう言った瞬間の「よくネットでこんなデカいもん買うな~」という配達員さんの少々あきれた顔が忘れられない。
こうして、ようやく我が家に「理想の家具」であったチェストが鎮座ましますことになったのである。
うちには、本棚とライティングビューロー以外、収納家具というものがなかった。そこにこのチェストの登場である。当然ながら引き出しがあって、ものが入れられる。
私は特に、収納家具が欲しかったわけでも、必要だったわけでもない。単にこのチェストの見た目が大変気に入っただけである。しかし、来たからには何も入れておかないというのも妙なものだ。「何を入れればいいかな?」と考えてみたけれど、多くて困っているのは本か服で、本は重量的にちょっとどうかと思うし、服は、チェストを置いている場所がクローゼットから少し離れているので、ここに入れてしまうと逆にコーディネートが難しくなりそうだ。
そこで、「いま、外に出ているものをこの中にしまってスッキリさせたらどうだろう」と考えた。
いろいろ入れてみた結果、スッキリはした。確かにした。そして、チェストに収納したあと、そこに残されたものは、大量の箱類やカゴ類、ディスプレイ用のトレイなどであった。
私は、収納には大きく分けて5つのパターンがあると思っている。
1 見せる収納
上級者向け。見せても生活感が出ないようなものを選ぶセンスが必要。
2 箱、カゴ収納
お洒落な箱やカゴに見せたくないものを突っ込み、並べることで統一感のあるインテリアを演出。なんとなくサマになりやすい。
3 目隠し収納
見せたくないものが入ってるガラス戸に紙を貼って中が見えないようにしたり、見せたくないものが置いてある生活感あふれるゾーンに布のカーテン的なものをかける収納。ごちゃごちゃした部分を布で見えないようにするだけで、それなりにスッキリ見える。
4 隙間収納
突っ張り棒や幅の細いワゴンなどを駆使し、デッドスペースを活用する収納。もともと収納の少ない部屋や、狭い部屋ではこれをどうやるかでだいぶ生活が変わってくる。
5 大規模収納
一部屋を書庫にする、壁面を一面全部作りつけの棚にしてしまうなど、部屋作りを考えるときに空間をまず確保する収納。正直、これがいちばんスッキリする収納だとは思うが、部屋選びの時点で考えていないと実現は難しい。
私はこの中で、主に1と2を好んで実践していた。見せてもいいものはあまりないので、アクセサリー類を表に出してちょっとお店のディスプレイっぽくし、あとは箱とカゴで、アイロンやドライヤーなどの生活感を醸し出す家電や「バスマジックリン」などの洗剤類を隠しまくっていた(洗剤類は今もカゴで絶賛隠し中である)。
それらをチェストに収納した結果、ディスプレイ用のトレイや箱類が手元に残されたわけである。
そしてついでに下着類を入れてみたところ、ポリプロピレン製の引き出しががっつりゴミとして目の前に現われた。
なんだかその瞬間、ちょっと呆然としてしまった。
70kgのチェストは、狭い我が家ではすごく存在感がある。チェストが届くビフォーとアフターを比べたら、確実にチェスト前のほうが、部屋は広く見えた。
しかし、チェストにものを収納したおかげで、これまで外に出していたものがしまえて、部屋の見た目は以前よりスッキリしたような気がする。
結局、「大きな収納でごちゃごちゃしたものを全部しまう」→「でもそれだと部屋が狭くなる」→「見せる収納を工夫する」→「センスが追いつかずなんとなくごちゃごちゃする」→「大きな収納でごちゃごちゃしたものを片付けるしか……」というループの中からは、めちゃくちゃ広い部屋に引っ越さない限り1mmも逃れられないのだ。
断捨離や『人生がときめく片づけの魔法』のヒット以来、とにかく「ものを減らして快適な生活を!」というのがインテリアの鉄則のように言われているけれど、この無限ループから逃れるには、確かにそれしか選択肢がないのである。「収納するもの、そのものを減らす」→「収納するスペースが減る」→「収納に関する悩みがなくなる」。その通りである。そして実際、最低限生活をしていくだけのものって、そんなに多くはない。
そりゃあ、「ものを減らす生活」が主流になるわけだよなぁ、としみじみ思った。
ものはないほうが掃除もしやすいし、ものを増やさないことを意識して生活していれば、使うか使わないかわかんないものをこまごま買い込むことも減るだろう。
でも、私はがっつりものを処分したときにまず何を最初に考えるかというと、「次は、『なんでこんなもの買っちゃったんだろう』と思わないようなものを買おう」なのである。捨てたそばからもう買う気持ちだ。捨てるものと捨てないものを選別することから発見する「自分にはこういうものは必要ない」「自分が本当に好きなのはこういうものだ」という基準に従って、新しい部屋にしていこう、と考えるのだ。
そう考えているうちは、ものは減ってもまた増えてゆくような気がするが、30%減20%増、ぐらいの感じで、ちょっとずつ好きなもので厳選された部屋、収納に悩まず、何もかも見せっぱなしでも気にならないくらい、いいものに囲まれた部屋になるといいな、と夢見ている。
ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。
プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる