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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル?

“なんとなく買ったもの”に囲まれた毎日を抜け出して、
愛着溢れる“理想のお部屋”で生きていきたい。
そんな女性に送る、雨宮まみの情けなくも前向きな
“暮らし”エッセイ。

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理想の部屋まで何マイル? MILE 02

家具

私は、調和が好きである。まぁ、調和をかき乱したい!という精神の持ち主もいらっしゃるだろうが、私は統一感のある場所に行くと落ち着くし、気持ちのいい空間だと感じる。
しかし自分の部屋となると、なぜたったこれだけの狭い部屋に、統一感や調和を与えられないのだろうか……。
それが、長年の私の悩みだ。

「狭いからしょうがない」「狭いから素敵な家具が置けない」「ものが多いからごちゃごちゃせざるを得ない」。それらが私の主な言い訳だった。しかし、引っ越しを機に、新しい「理想の部屋」に不要なものを捨てて捨てて捨てまくってしまうと、ものはあまり残らなかった。
「これで、ようやく『シンプルな暮らし』ができる!」
私は期待に色めき立った。

しかし、実際に引っ越して家具を入れてみると、そこは「シンプルな素敵な部屋」ではなく、「ただ殺風景な部屋」になっていた。
「ええー!? ものが減ったら、『シンプルで素敵な部屋』になるんじゃなかったの!?」
騙されたような気分だったが、シンプルな部屋は単純に「ものがない」という部屋なのではなく、絶妙のバランスですっきりとものが配置されているものなのだ、とわかった。
では、この部屋をこれからいったいどうやって素敵な部屋にしていけば良いのだろう。

ひとくちに「素敵な部屋」といっても、それにはさまざまな種類がある。
北欧風のインテリアもあれば、革張りのソファにガラスのテーブルなどのモダンなインテリアもある。ものがたくさんあっても、どこか統一感があってさまになっている部屋もある。和洋折衷でまとまっている部屋もあれば、適度に生活感があって落ち着く部屋もある。
デザイナーズ家具がうまく活かされている部屋や、パリのアパルトマン風、ミッドセンチュリー風……。さまざまな部屋の方向性の中から、いったいどれを選べば、私の理想の部屋は出来上がるのだろう?
しかも、壁の色を変えたり、床を張り替えたりするのはかなり厳しい、壁は白いクロス貼りが前提のこの賃貸の部屋で。

まず、絶対に捨てない家具は何か考えた。

一つ目は、上京してくるときに持ってきて、学生時代からずっと使っている木製のライティングビューロー。これは、下部が収納スペースになっており、引き出しの中に生活や仕事に必要なものが全部入っている。これひとつあれば、ここだけで仕事が済んでしまう。これを買い替えようと思ったことは一度もない。暗めで艶のある木目も好きだし、何よりもう身体にしっくり馴染んでしまっている。大事な仕事机だ。

理想の部屋まで何マイル? MILE 02

二つ目は、アンティークショップで買った金の縁取りのある大きな姿見。
これは、引っ越すずっと前に初めてこだわりを持って買ったものだ。当時は今よりずっとお金がなく、この鏡は4万円だった。でも「この鏡に飽きたりすることは絶対にない。夢見ていたような理想の鏡だ」と思ったので、私はそこから数ヶ月かけて4万円を貯め、買った。この鏡の前でお化粧をしたり、ドライヤーをかけたり、実用品としても便利に使っているし、やっぱり好きなデザインだ。自分ではっきり家具の方向性を選び取った最初の買いものなので、これは部屋作りの指針となる家具だと思った。

三つ目は、同じくアンティークショップで買った木製のカフェテーブルである。
これも、けっこう思いきった買いものだった。100年ほど前の小さなカフェテーブルなのだが、「引っ越すので○日までに届けて欲しいんです」と言うと、「いえ、アンティークですからこれから傷や歪みがないか一度確認して、修復して磨いてからのお渡しになりますので、最低でも二週間はお待ちいただかなくては」と言われ、こちらは「100年前の家具をamazon感覚で買おうとしてすみません……」と思ったものだ。これも気に入っている。

そして、この三つの家具には統一感があった。どれも英国アンティーク風なのだ。
その瞬間、ぼんやり頭の中に理想の部屋のイメージが降りてきた。
ヨーロッパ風のものに、シノワズリ(中国趣味)や、エキゾチックなものを取り入れたインテリアが、私はいちばん好きなのだ、ということを思い出したのだ。

歴史的にそういうインテリアはあるのだが、当時のものは装飾過多で、そもそも貴族の邸宅などで採用されていたものだ。とても同じようにはできない。
けれど、私は以前、桐島かれんさんが洋館を使って『House Of Lotus』(現在は広尾に移転)というお店をされていたとき、その空間にバリやモロッコなどの雑貨がうまく調和して置かれていたのを覚えていた。
和洋折衷を上手にしている人のように、英国アンティーク風と、エキゾチックなもの、シノワズリを合わせて、なんだかいい空間にはできないだろうか、と考えた。

今度こそ妥協のない家具選びを! と意気込んだわりに、とにかくありあまる本をなんとかしなければ引っ越しの段ボールが空かず、最初に買った家具はIKEAの本棚だった。また妥協である。
計画がダダ崩れになっていく気がしたが、ある日、私は理想の家具に出会った。
それはモロッコの、象眼細工を施されたブルーのチェストだった。

お値段は高いし、サイズもなかなかうちにとっては大きい。とりあえず写真を撮らせてもらい、「どうしてもあれだと思ったら買おう」と考え、折に触れては思い出していたが、「買うとしたらリボ払いかな……」「やっぱり身の丈に合わない買いものなんじゃないか」「そもそもあの家具がうちに合わなかったらどうしよう」などの迷いが生じまくっていた。

だいたい、家具として「チェスト」は別に必要がなかった。入れるものも特になかった。
私は3年間悩んだ。そんな高い家具を買ったことがなかったので、かなりびびっていたのだ。持っているお金により、スケール感が決まる人間というのは、悲しいものだなぁ……と我が身を振り返って思う。

それを、「やっぱり買おう」と決断する日が来た。店に行って在庫を確認すると、なんと「去年の6月にセールで売れてしまいました」とのことだった。しかし、もうこっちは買いたい気持ちに火がついている。「セールで買ったなら、その人から定価でいいから買い戻したい……!」「いや、この際、原産国まで買いに行ってもいい」などと無茶なことを半分本気で思いつつ、友人にその家具の写真を送ってみると、「日本でなければあるよ~」と、画像検索で同じ家具が載っているサイトの一覧を送ってくれた。

こうなるとハンターモードになった私は止まらない。帰宅後即座にPCを立ち上げ、片っ端からネットショップのサイトを開いていく。アメリカでは品切れ、イギリスでも品切れ、ついに見つけたのは、インドのショップだった。しかもセールで少し安くなっている。私は即座に買う決意をし、今までやったことのないPayPalに登録。初めての海外通販をすることになった。

注文したのは7月8日。しかし、しばらく待っても「発送しました」のお知らせが来ない。インド……偏見だが、ずいぶんのんびりしてそうだ。初の海外通販というのもあり、一日に一度は「だまされてるんじゃないか」という考えが頭をよぎる。ついにしびれを切らし、22日にたどたどしい英語で「いつ送ってくれますか?」とメールを送ると、即座に「今日送りました!」と返信が。蕎麦屋の出前かよ!

一応、DHLの配送サービスの番号がついていたので、私はその荷物が今どこにあるのか確認するようになった。確かに「22日に集荷」と書いてある。そして23日には「デリーに到着」「通関手続き中」「処理保留中」……保留中!? 「保留しないで!」と叫びたい気持ちでいっぱいである。ここから無事に、我が家まで運ばれてくるのだろうか。そしてそれはいつなのだろうか。

理想の家具に出会うのは難しい。でも、「これなら一生飽きることはない」「このテイストは一生好きだ」と思える家具に出会ったら、私のような無駄な躊躇はやめて、買うことをおすすめしたい。本命の家具があれば、それを中心に部屋作りができる。本命じゃない家具に合わせてラグやカーテンを選んでいくと、悪くはないが気に入りもしない、中途半端な部屋が出来上がる。好きじゃないものに周りを合わせてしまってはだめなのだ。だから、本命にはまっすぐに、出し惜しみをしないようにしてほしい。

そう、信頼できるかどうかもわからないインドの会社に家具を注文し、いつ届くか不安な毎日を送るようになる前に……。

文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

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