![モチイエ女子 住にまつわる楽しいコンテンツ](../../common/images/nav_top_head_1.png)
つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。
いったい誰がそんなことを決めたんだろう。
女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?
そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。
家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。
そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。
モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。
寝室、と呼べるものを持った経験はない。けれど、ベッド周りのことは、インテリアの中でもかなり悩ましい部類の話だ。
最重要事項のマットレスについては、以前も書いた通り、マニフレックスのマットレスを買ったことで定番が決まったが、シーツや布団カバー、人によってはベッドカバーなどのベッド周りリネンは、うちのような狭い部屋では、カーテンの次ぐらいに面積の大きい布になる。これをどういうものにするかで、部屋の印象がすごく変わるのだ。
初めて一人暮らしをしたときは、淡いイエローに臙脂の線で少し中東風の模様がプリントされているセットを買った。自分のベッドを持つのも初めてで、そんなものを買うのも初めてで、それを布団に装着した瞬間、部屋がパッと明るくなったのを覚えている。
ホテルのような真っ白で清潔なベッドに憧れたこともあった。すべすべの手触りのリネンもいいなと思ったり、やっぱり上質の麻がいいと思ったりして、けっこう奮発して良いものを買ったこともあった。
けれど、白はちょっとした汚れが目立ってしまったり、すべすべのは落ち着かなかったり、麻のは肌触りは確かに最高だったものの、洗濯するたびにアイロンをかけなければ見苦しかったり(クリーニング屋さんにのりづけだけ頼む、なんていう方法もあるようですが、それもなかなか大変そう)、まぁそりゃそうですよね、という失敗を何度も繰り返すばかりで、「これ!」という答えがなかなか見つからない。
自分にとって快適で、見た目も気にいるベッドリネンを探すのは、けっこう難しいことなのだ。ちょっとした気分転換をしたいときは、IKEAでそれまでとは全然違う柄物を選んで、部屋の雰囲気が変わるのを楽しむのもいいものだけど、もし予算に上限がなかったら、どんなベッドにしたいのか、どんな場所で眠りたいのか、自分のイメージを探ってみても、はっきり定まるものがない。
天蓋つきのベッドに、天鵞絨のカバーがかかり、裾にはタッセルがついていて、枕元にはたくさんのクッションがあり、金色のロープで縁取りがしてあって……みたいな重厚なベッドにも憧れるけれど、私は寝転がって本を読むことが多いので、気軽な場所でもあってほしい。その前にまず天蓋つきのベッドはうちのドアから家の中に入らないのだし……。
そういうものに憧れて、天井に薄い布をピンで刺して留めて、天蓋ふうにしていたこともある。けっこう楽しかったし、雰囲気も出た。でも今はそういう「こうしたい」というはっきりしたものが見えてこない。特にマットレスの買い替えでベッドのサイズが変わり、リネンを全部変えなきゃ!というときは混乱して全然どうしたいのかわからなくなってしまった。何色なら自分は落ち着くのか、素材は何が好きなのか。服だったらすぐに答えられるのに、ベッドリネンだと答えられないのはなぜだろう。
でも、家の中でいちばん変えたいところはどこか、と訊かれたら、本がはみ出ている本棚を除けば、ベッド周りである。めちゃくちゃロマンチックで清楚な感じにもしてみたいし、ギラギラにセクシーな感じにもしてみたい。リネンを変えてクッションやカバーを配置するだけでもかなり変わると思う。
一度、真っ赤なシーツを買ったことがある。真っ赤なシーツには、裸がよく映える。こんなこと、たくさん失敗をして、血迷っていろいろ試していなければ一生知らなかった事実だろう。
淡いピンクはたとえベッドリネンでも私にはあまり似合わなかったし、濃いブルーは落ち着くものの、もう少し甘さが欲しい気持ちにもなったりした。
寝室まわりのことは、自分のセンスのなさをいちばん感じる部分で、考えると落ち込むことも多いのだが、「これでいい」と思っていないだけに、ときどき夜中にネットで探し始めると止まらなくなってしまう。目が疲れるまで見続けても「これ」というものが見つからない。いや、見つからないのではなく、本当はあるのにうまく組み合わせるアイデアが自分にないだけなのかもしれない。
最近も、買ったはいいが部屋に合わなかったベッドカバーを手放した。失敗ばかりだけど、また、未知の色や素材のものに手を出して、懲りずに変革をこころみたいと思っている。
ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。
プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる